導入事例 聖隷富士病院様

CASE28

調剤過誤から脱却 病院でも実現可能な間違えない仕組みづくり

静岡県富士市
総合病院 院内調剤
取材日:2016年07月

病院内で発生した過誤インシデントの約3割が調剤を含めた薬剤に関わるものだったという。実際、規格違いの薬品を多く取り揃える薬剤課では、取違えによる調剤過誤のリスクを常に抱えていた。

財団法人恵愛会 聖隷富士病院
薬剤課 山内 拓 様(薬局長・薬剤師)

薬物治療の最適化を目指して

富士山の南、駿河湾に面した静岡県富士市。江戸時代は東海道14番目の吉原宿を中心に栄えたかつての宿場町だ。宿駅制度が廃止された明治以降は富士山の伏流水により水資源が豊富であったことに加え、首都圏に近いことから製紙業が同市の基盤産業となった。近年では「日本七大工場夜景」に名を連ね、工場夜景が同市の新たな観光資源の一つとして期待されている。

財団法人恵愛会 聖隷富士病院は当地の中核病院として、20診療科、150床を有する。また、同地域で唯一アブレーション治療が可能な同病院は、当地の急性期医療にとっても欠かせない存在となっている。全て院内処方の同病院。薬剤課(山内 拓 薬局長)では1日約400枚の外来患者処方箋、約50枚の入院患者処方箋を応需している。

投薬カウンターの様子

病院内で発生した過誤インシデントの約3割が調剤を含めた薬剤に関わるものだったという。実際、規格違いの薬品を多く取り揃える薬剤課では、取違えによる調剤過誤のリスクを常に抱えていた。更に、「薬が入ってなかった」と患者様から言われると、たとえ精確に調剤していたとしても説明する根拠が乏しく、結局無償で再投薬する事が月に1、2回あったという。その為、処方箋に薬の識別番号を入れ、トリプルチェックを行う等の対策を行っていたが、「いずれも人が関与しヒューマンエラーが発生する。抜本的な対策にはなっていなかった」とのことだ。山内氏は、数年前より監査システムの実効性の検討や製品情報を収集していたという。しかし、既存メーカーの監査システムは、高額な導入コストや運用の手間を考えると現実的ではなかったとのことだ。対応策に苦慮している間にも、応需する処方箋枚数が増え、調剤過誤リスクへの対応や調剤の記録を残す観点からも、監査のシステム化は急務となっていた。

意中の監査システムが見つからない中、とある調剤機器展示会で見学した「調剤監査システム audit」。1日400枚以上の処方箋を滞りなく処理できる能力と、手軽な導入コストを評価し、導入を決定した。

同システム導入により、人手を掛けずに調剤過誤を発見し、精確に調剤できる仕組みが構築できたという。「ピッキング時の取違いを同システムが確実に発見するので、薬剤師は安心して調剤できるようになり業務に掛かる手間も省けた」と同氏は語る。

薬剤師もチーム医療へ参画するなど、従来の調剤の枠組みからの脱却が求められる。「調剤の省力化は、どの病院・薬局でも直面する課題」と同氏は語る。適切な薬物治療を行うためには、患者様の状態をカルテ、検査値等よりしっかり把握する必要がある。「同システムによる効率化は、薬剤師のやるべき業務の時間を確保し、患者様への有効な薬物治療につながる」と調剤業務における同システムの存在意義を強調した。

調剤室の様子

同システム導入後、無償の再投薬は発生していない。「患者様から問合せの際は、同システムに保存されている監査記録を元に説明し、ご納得いただいている」と同氏。「薬剤師の安心、監査の手間を考えると、もはや同システム抜きの調剤に戻す事はできない」とauditへの信頼は絶大だ。

患者様の為、そして地域の医療を支える事が、薬剤師の役割と語る山内氏。「薬剤師は医療に従事する者として、患者様一人一人により良い薬物治療を提供できるよう努力しなければならない」と、語気を強める。地域の医療を支える聖隷富士病院、そして薬剤課は業務の効率化を追求し、今後も患者様一人一人の薬物治療と真摯に向き合っていく。